【舞香亭日誌】注目を浴びたいと願う者へ

「注目を浴びるようになりたい」と願う者がやってきた。その目には、誰かに見つけてほしいと願う切実さと、誰にも気づかれないまま消えてしまうことへの恐れが宿っている。

私は知っている。ひとの心を縛り付けることはできない。香りで他者の意思を操ることもできない。そして、注目を浴びたからといって、人の心に残るとは限らない。
だから私に、「ひとを振り向かせる香」は調合できない。

調合するのは、自らの存在を隠さなくなる香。誰かに認められようとする焦りを手放し、自分の言葉、自分の姿、自分の歩みを、そのまま世に差し出すための薫香。

飾ることをやめた者ほど、ひとの記憶に刻み込まれる。だから、飾りを剥ぎ取り、その者の持つ光を包み込む香りを調合する。
この香を焚けば、無理に人を振り向かせる必要などない。ただ、自分がここにいるということを、世界に静かに知らせてくれる。
舞香亭幻想香炉

自らの存在を世に示す香

誰かの視線を奪うのではなく、自らの存在を隠さず、この世界に静かに示すための薫香。
「注目」とは、人の心を強制的にこちらへ向けることではない。自らの内に灯したものを覆い隠すことなく、その光を世界へ差し出したとき、そこに惹かれる者が現れる。この香は、他者からの承認を求める焦りを鎮め、自分自身の存在に確かな輪郭を与えるために調合される。

準備材料

調合手順

  1. 【存在を目覚めさせる】
    夜明け前の静かな刻、乳鉢へフランキンセンスと安息香を入れ、ゆっくりと細かく砕く。この時、「我はここに在り、我が光を隠さない」と三度唱える。
  2. 【魅力を重ねる】
    ローズ、ローリエ、シナモンを加え、香りが一つになるまで静かに擦り合わせる。この時、誰かに注目されている姿を思い描くのではなく、自分が本当に伝えたいものを思い浮かべながら混ぜること。
  3. 【記憶に残る香を宿す】
    ローズウォーターまたは蜂蜜を少しずつ加え、全体を丹念に練り合わせる。形を整えながら、「求めるのは喝采ではなく、心に残る存在」と心の中で唱える。
  4. 【光の下で乾かす】
    円錐形、または小さな団子状に成形し、風通しの良い日陰で七日間乾燥させる。乾燥の間は、誰に見られるかを考えず、自分自身が何を世に示したいのかを静かに思い定める。

燻らせ方の心得

「人の目を奪うのではない。我が灯(ともしび)を隠さぬこと。」

  1. 香に火を灯し、炎を静かに吹き消す。立ち上る煙を追いかけず、その姿をただ眺める。煙が高く昇るほど、自らの存在もまた世界へ広がっていくと心に刻む。
  2. 煙とともにゆっくり呼吸し、「見られたい」という欲望を少しずつ手放す。注目を求める心が静まったとき、初めて自分自身の持つ魅力が現れる。
  3. 最後に心の中で、「願うは人の視線にあらず。我が光を見つける者との出会いなり」と唱える。香が燃え尽きる頃、誰かに認めてもらおうとする焦りは薄れ、残るのは、自らの存在を堂々と世に差し出す者だけが持つ、静かな輝きである。

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