世界の「香りを燻らせる文化」とその道具

世界各地では、香りを「燃やす」「燻らせる」ことによって、神への奉納、空間の浄化、瞑想、接客、祖先供養など様々な目的で利用してきました。
ここでは、地域ごとの代表的な香文化と、その際に使用される道具や使い方を紹介します。

地域・国 代表的な香料 使用する道具 主な使い方・特徴
日本 沈香
白檀
丁子
桂皮
香炉
香炭団(香炭)
香灰
聞香炉
香箸・灰押し
香灰の中に香炭を埋め、香木を直接または銀葉の上で温めます。香道では「香を聞く」ことを重視し、燃やすよりも穏やかに加熱して香りを楽しみます。
中国 沈香
白檀
龍脳
乳香
安息香
三足香炉
香炭
香匙
香篆(香印)
香粉を灰の上に模様状に並べる「香篆」が発達しました。香時計としても利用され、書画や瞑想の時間を測る役割も果たしました。
韓国 沈香
白檀
松脂
よもぎ
真鍮製香炉
香炭
寺院用香炉
仏教儀式や祖先祭祀で香を焚きます。家庭でも法事や祭礼時に香炉を使用する文化が残っています。
インド 白檀
乳香
没薬
グッグル
樟脳
真鍮製香炉
炭火鉢
アラティ皿
プージャ(礼拝)の際に炭火で樹脂香を燃やします。寺院では神像や参拝者へ香煙を巡らせます。
チベット・ヒマラヤ ジュニパー
アルテミシア
シダー
高山薬草
供煙炉
大型金属香炉
火鉢
「サン(供煙)」という浄化儀礼で大量の薬草を燃やし、煙を山や空へ送り神仏へ捧げます。
中東・アラビア ウード(沈香)
乳香
没薬
アンバー
マブカラ(香炉)

火箸
炭火の上に香木や樹脂を置き、来客を迎える際や祝祭時に使用します。衣服や髪にも煙をまとわせます。
ペルシャ(イラン) 乳香
没薬
ハルマル
ルー
真鍮香炉
炭火鉢
魔除けとしてハルマルの種子を燃やし、家中へ煙を巡らせます。現在でも祝い事で行われています。
北アフリカ 乳香
ベンゾイン
アンバー
陶製香炉

金属皿
結婚式や祝祭時に家全体を香煙で満たし、邪気払いと祝福を行います。
東アフリカ 乳香
没薬
コパル
土製香炉
炭火鉢
エチオピアのコーヒーセレモニーでは乳香を焚き、来客への歓迎と神聖な空間づくりを行います。
ヨーロッパ(カトリック圏) 乳香
没薬
ベンゾイン
鎖付き香炉(Thurible)
香船(Boat)
司祭が香炉を振り、祭壇・聖書・会衆へ香煙を向けます。煙は祈りが天へ昇る象徴とされています。
ネイティブアメリカン ホワイトセージ
シダー
スイートグラス
ジュニパー
アバロンシェル
土器
羽根
植物を直接燃やし、羽根で煙を身体や空間へ送る「スマッジング」を行います。浄化や祈りに欠かせない儀式です。
中南米(マヤ・アステカ) コパル
松脂
カカオ殻
土製香炉
祭祀用火鉢
神殿でコパル樹脂を大量に燃やし、神々への供物として煙を捧げました。現在も「死者の日」の祭壇などで使われています。