明ぼのやしら魚しろきこと一寸

【超現代語訳】

現代語訳松尾芭蕉野ざらし紀行 桑名の本統寺で考えた。
「西行を雪の中の時鳥に譬えるなら、ワシは所詮、冬牡丹の藁囲いに潜む小さな鳥よのう。」
 そう思うと旅がいやになって、まだ薄暗いうちに浜の方へと出てみたんじゃ。するとチョットだけ発見があってな、こうつぶやいたんよ。
「一寸の白魚には伸びしろがあるんじゃ。それ、光が差せば、白けた部分も消えていく…」
訳:Rockets

全文超現代語訳「超解芭蕉野ざらし紀行」

【野ざらし紀行原文】

桑名本當寺にて
 冬牡丹千鳥よ雪のほとゝぎす
草の枕に寝あきて、まだほのぐらきうちに浜のかたに出て、
 明ぼのやしら魚しろきこと一寸

⇒ 野ざらし紀行の日程表と句

【解説】

旅に何かを求め続けて折れそうになっていた芭蕉の気持ちに、変化が現れはじめる。

本當寺
東本願寺桑名別院本統寺。住職は古益と号した季吟門下の大谷琢恵。
冬牡丹千鳥よ雪のほとゝぎす
藤原定家の「深山には冬も鳴くらんほととぎす玉散る雪を卯の花と見て」を下地にする。「笈日記」(各務支考1695年)に、「古益亭」の前書きで「冬ぼたんちどりか雪のほとゝぎす」。さらに「おなじ比にや、浜の地蔵に詣して」の前書きで「雪薄し白魚しろきこと一寸」。また、「狼も一夜はやどせ芦の花」「花を吸ふ虻なくらひそ友すゞめ」も詠まれた。
明ぼのやしら魚しろきこと一寸
「笈日記」にある「雪薄し白魚しろきこと一寸」には、「此五文字いと口おしとて、後には明ぼのともきこえ侍し」とあり、元は「雪薄ししら魚しろきこと一寸」だったことが分かる。「雪薄し」にしたことを非常に悔やみ「明ぼの」に変えたというところに、心境の変化があると見る。「一寸」は、杜甫に「白小群分命、天然二寸魚」に因るか。「小さな白魚は二寸ほどしかないが、それも天命によるものなのだ」という意味。

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