野ざらしを心に風のしむ身哉

【超現代語訳】

現代語訳松尾芭蕉野ざらし紀行 着の身着のまま長旅よ。無我に到った古人に惹かれて、江戸のおんぼろ屋を飛び出してはみたが、秋風の冷たさに思わず、
「行き倒れを決意したんじゃが、今日の風は身に染みるぜ」
とつぶやいた。もはや後悔あとを絶たず、弱気になるばかり…
「出府して秋も十回目を数えると、江戸が故郷になってしもたんじゃ。」
訳:Rockets

全文超現代語訳「超解芭蕉野ざらし紀行」

【野ざらし紀行原文】

千里に旅立て、路粮をつゝまず、三更月下無何に入と云けむ、むかしの人の杖にすがりて、貞享甲子秋八月江上の破屋をいづる程、風の聲そゞろ寒気也。
 野ざらしを心に風のしむ身哉
 秋十とせ却て江戸を指す故郷

⇒ 野ざらし紀行の日程表と句

【解説】

旅立ちの理由を述べるとともに、道行きの不安を綴っている。門人の苗村千里が随行したために、冒頭に「千里」を置いたか。紀行文のタイトルにも使われる「野ざらし」は、道端に捨てられた髑髏のことで、行き倒れを意味する。故郷へ向けての旅ではあるが、決して悦ばしいものではなく、むしろ心理的苦痛を伴うものであった。

千里に旅立て、路粮をつゝまず
「荘子・逍遥遊」に「千里に適く者は三月糧を聚む」とある。本来は準備万端で旅立たなければならなかった。
路粮をつゝまず、三更月下無何に入
松坡宗憩撰の「江湖風月集」に、禅僧広聞の詩で「路粮ヲ齋ズ笑ツテ復タ歌フ。三更月下無何二入ル」。食糧の準備をせずに旅をして、笑ったり歌ったりしながら、真夜中の月明かりのもとで無我の境地に至るということ。
秋十とせ却て江戸を指す故郷
賈島の「桑乾を度る」に因る。「却って并州を望めば是れ故郷」である。

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