【超現代語訳】
大井川を越える日はずっと雨じゃった。千里が
「この雨は、我らを江戸に連れ戻すために、大井川が指示して降らせたものでしょう」
と言う。ワシは、花をむさぼり食う馬の上で、
「道端にようやく咲いた一朝の夢さえも食われてしもた」
と嘆いた。
訳:Rockets
全文超現代語訳「超解芭蕉野ざらし紀行」
【野ざらし紀行原文】
大井川越る日は、終日雨降ければ、
秋の日の雨江戸に指おらん大井川 ちり
馬上吟
道のべの木槿は馬にくはれけり
⇒ 野ざらし紀行の日程表と句
【解説】
旅の初めは、困難ばかりが見えてしまうもの。自らの夢が天に阻まれていると感じられるのも自然。ここではまだ、試練との考えを表に出さず、自らの弱さを強調する。
道のべの木槿は馬にくはれけり
真蹟懐紙に、ひとつ後の小夜中山で詠まれた「馬に寝て残夢月遠し茶の煙」のあとに、「眼前」の前書きで「みちのべのむくげは馬にくはれけり」としたものがある。
木槿
白居易の「放言」に「泰山不要欺毫末 顔子無心羨老彭 松樹千年終是朽 槿花一日自為栄 何須戀世常憂死 亦莫嫌身漫厭生 生去死来都是幻 幻人哀楽繋何情」。ここから「槿花一朝の夢」という、人の世の儚さを指す言葉が生まれた。