夏衣いまだ虱をとりつくさず

【超現代語訳】

現代語訳松尾芭蕉野ざらし紀行 帰り道、甲斐山中の宿では飯盛女の世話になってな、
「行駒の麦に慰むやどり哉」
と詠んだんよ。
 卯月の末に芭蕉庵に帰り着いて、四肢を投げ出しながらこう思た。
「悪い虫は取り切れんかった…」
訳:Rockets

全文超現代語訳「超解芭蕉野ざらし紀行」

【野ざらし紀行原文】

甲斐の国山中に立よりて、
 行駒の麦に慰むやどり哉
卯月の末、庵に帰りて旅のつかれをはらすほどに、
 夏衣いまだ虱をとりつくさず

⇒ 野ざらし紀行の日程表と句

【解説】

8ヶ月を超える芭蕉の旅が終わる。最後に詠まれた句は未達を表現し、当初の目的が十分に達成できなかったことを表している。それは俗世から遠ざかることであり、「行駒の麦に慰むやどり哉」には、スタート地点に舞い戻ってきたような響きがある。しかし、「夏衣いまだ虱をとりつくさず」には、何か充足感のようなものも感じられるのである。

甲斐の国山中に立よりて
木曽路を経て甲斐中山に立ち寄ったというのが定説だが、帰路を東海道にとったとの説もある。「思ひ立つ木曾や四月の桜狩り」(熱田皺筥物語には思ひ出す~)の句とともに発ち、甲斐で詠まれた句に「山賎のおとがひ閉づる葎な」がある。

江戸深川の芭蕉庵。

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