●俳句と川柳潜流にまかせて亀の家路かな
●タブーと写生について鈍行の発車時刻やかたつむり
●AI の中心で、愛をさけぶ庭に咲く薔薇一輪の片明り
●季語のはたらき立ちのぼる業火あやなす地平線
●季重なりのこと木下闇まつりばやしの遠ざかる
●切れとは何か朝焼やさめて情火の消えぬまま
●掛詞から縁語へと濡縁に栗花落の声や夜の底
●「軽み」と呼ばれる極意うきくさや音もたてずに雨のふる
●運命をなぞる景色とらわれの野性ほえるや夏の月
●五七五と言霊の正体靴音を戻すしじまや祭りあと
●吟行の心得顔あげて雨に咲くなり月見草
●不易流行考ひかりへと火蛾のいのちの燃え立ちて
●俳句の面白み夕波や灼けた石ころ砂にして
●俳句の奥義もどさるるやみに聞くなり遠花火
●信念なきポエジー大つぶの雨にかわるや蝉しぐれ
●写真俳句の視点みうしなふ風の姿やねこじゃらし
●リズムと響き浮舟や撫子なでしこの岸辺
●だから俳句を…土砂降に案山子はなにも言わずして
●句会と絶対美熱冷めてむくろ残暑に横たえて
●しおりのこと月影や道化師去りし砂利の上
●季語を作った日花ばたけ道ひとすじにみさきへと
●ジョークのかおり秋風や明日より白きものなくに
●辞世を詠む限りなき空や流るゝ星の墓
●千句万句を刻むこといわし雲過ぎゆくもののはやさかな
●日本語のかたち寝待月窓下のひかり夢に過ぐ
●言いおおせて何かある母うたふ墓地に柘榴の割れる頃
●動かざる世界鳥渡るつなぎの鳩は帰らざる
●平凡のすすめ蓑虫やははと笑へぬ鬼の性
●たるみあれ既望雲間さまよふ遅き夢
●7mmの本意いちまつの青さ残して落葉かな
●細みに分け入るからっぽの小瓶や冬のかげさして
●勉強の理由炉火恋しむかしの歌を聞く夜は
●文体についてさすらひの群れ追うものや初時雨
●三段切れ木葉舟寄せては返しまた寄せて
●実践万葉湧きあがる影や炉に堕つ置手紙
●俳句と宗教飾りなき樹にも降り積む今日の雪
●咆哮と囀り転生の孤狼あばきし冬の月
●四季と季語鐘撞くやなゐふる朝も雪の夜も
●自己発見のツールとして野良犬に名を問ふ男の枯野道
●俳句と芸術雪女あつきおもひに亡へり
●師匠の本意匂ひさへ消して雪花のわすれ水
●俳句の道もつれ髪わびすけちぎり添ゆるかも
●十七文字の宇宙定まらぬ風の夜なり梅の里
●尽きることのない資源古草や幾度踏まれて花の土
●暗闇古傷のうづく夜なり猫の恋
●味わうもの鳥雲にひとは黙して摩天楼
●師匠の喜怒哀楽おもひでをうづめてさびし桜かげ
●師匠の苦しみしあわせのあぶらかだぶら花菜さく
●つぶやき狂宴に過ぎてひとよの花かがり
●諷詠二箇条よつば摘む嘘もやさしき春の野に